一太郎

 一太郎2018を買おうものか迷っている。

 めあてはもちろん(?)付属のイワタフォントである。
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 一太郎は毎年新しいバージョンが出るが、最近は毎度毎度別のフォントがバンドルでついてくる。
 ちなみに、来年2月発売の2019の付属は秀英体*1
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 で、バンドルフォントではありがちなことに、普通にメーカー直販で買うよりもかなり安い。
 私はイワタ明朝体オールド(岩田明朝体)がかなり好きで、「一番好きな書体は?」と聞かれたら、「そんなことを聞かれても困るけど強いて言うなら」といいつつこの書体を挙げるのだが、この書体(Pr6/Pr6N版)をメーカー直販で買うと17280円(税込)というわけでなかなか買うには至らずにいる*2
 そこでこの一太郎2018だと、このフォントのほかにいろいろついて(フォントだけでも計8書体)15000円弱なわけである。
 それでも額自体は大きいわけで、なんともなと思いつつ2月の発売からここまできてしまったのだが、買うならそろそろ決めないといけない。
 一太郎は次のバージョンが出たら市場からなくなる1年の期間限定商品なのである。

 ところで秀英体についていうと、別に嫌いではないはずなのだけれど、たぶんこの改刻後の秀英体で組まれている数年前に改版された岩波の万葉集の雰囲気がなんとなく好きになれなくて、あまり印象がよろしくない。
 書体に興味をもちはじめた頃に楽しく読んだ懐かしのサイト(ライトノベルの本文書体と萌え傾向の相関関係)での秀英体についてのはなしの印象は強く、たしかにマリみてのよかったなとは思うのだけれど。なんとなく今は秀英体がくどく感じてしまう。

 ラノベの話をだしたのでついでに言うと、岩田明朝体といって自分が真っ先に思い浮べるのはスニーカー文庫でありハルヒである*3。(まあ漢字は本蘭らしいが。)
 SF的な物語、そこに出てくるカタカナの小さな字面の印象がとても強い。
 とはいっても岩田明朝体の漢字も好きで、たとえば「燈」の字みたいに偏とつくりが食いこんでいる処理とかが好き。

 ちなみに、別の書体のはなしだが、一つの漢字で好きというものを挙げると凸版明朝の「熾」の字がある。というのもこの字、「音」の1画目を横線にするという古めかしく一般的ではないデザインになっているのである。非標準的文字が好きなオタクなので。

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アサウラベン・トー』(集英社スーパーダッシュ文庫)100ページより

 とまあ、文字についていうと「ちなみに」とかいっていくらでも話をつなげられてしまうのだが、それは別の機会にして、一太郎についての話に戻る。

 一太郎は2010の頃に親を説得して買ってもらってから家のパソコンに入れて使っていたので、わりと印象がよい。
 日本語で雑に*4文書の類をつくるには最高のツールだと思う。
 中高生の頃は学校で使うものを一太郎でつくりまくっていた。高校のときは文化祭実行委員をしていたので、説明会の資料なんかを一太郎でつくって、家で印刷して、生徒会室のリソグラフ*5で大量にコピーして配っていたのである。
 家でもネットの情報を適当に一太郎にコピペしてちょっと体裁を整えて印刷して……といったことをしょっちゅうしていた。
 こういう作業をするのに一太郎はほんとうにストレスが少なくてよいのだ。Wordなどと比べると、なんとも「日本人好み」なユーザー体験がある*6

 が、今ソフトとしての一太郎がほしいかというと、昔から思えば嘘みたいなほどにそういう気持ちが薄い。
 というのも、ワープロソフトを使う機会が全然ないのだ。

 大学に入って以来私はMS Officeを自分のパソコンに入れている*7のだが、それでもWordをまともに使ったことは大学4年間で数えるほどしかない(というよりPowerPoint以外ほとんど使っていない)。
 大学で書くレポートの類はほぼ全て手書き*8だし、PCで読むような文書はほぼMarkdownだ。同人誌をつくったりもしたが、それはLaTeX。印刷して読むようなもの(論文の類)はだいたい最初からPDFになっている。

 「今までなんのために使っていたのだろう」と不思議に思っていたが、上に書いたような用途を思いだしてみると、「カジュアルに印刷して読むことが減った」のがワープロソフトを使わなくなった原因であろうと気づいた。その要因として大きなものは、私の下宿にプリンタがなく、印刷しようと思うとコンビニなどに行かねばならないことだと考えられる。他にも、スマホを手にいれたことで、インターネットの情報が印刷しなくても寝ころがったりしつつ読めるようになったことも理由かもしれない。

 そして、この状況はしばらく変わらなそうである。

 というわけで、一太郎そのものがほしいかというと微妙なのである。
 もちろん一太郎プレミアムにはいろいろついてくる。
 ATOKは大きそうなのだが、最近IMESKKにはまってしまって抜けだせそうにないので、残念ながら使えない。
 Shrikenは昔愛用していたのだが、最近はいろいろな端末からメールを確認したいという需要がでてきて、結局Gmailをそのまま使っている。
 残るは花子だ。これに関しては、家庭用グラフィックソフトとしてのできは最高レベルだと思うし、使いみちもそれなりにありそうな気がする。

 というわけで、一太郎プレミアムを買うとなると実質的にフォントと花子のために、ということになるが……結局買ってしまいそうな気がする。
 買い切り1万5000円は比較的安いし、そして私は期間限定に弱いのである。

*1:2013のときも秀英体がついていた(私は買っていない)ので、「初収録?」と思ったが、たしかに両方秀英明朝をつけているものの、文字セットが違う(2013のときはStd、2019はPr6N)。

*2:文字セットを妥協すれば随分安くなるけれど、普段から変な漢字を使って文章を書きがちな人間なので、どうせ買うならPro版以上がほしい

*3:小6のときハルヒを図書館で借りて読んで以来オタク世界に入っていった人間なので。

*4:ここでいう「雑に」は例えばInDesignIllustratorとかを引っぱりだすほどガチではないような程度のものを指す。

*5:デジタル孔版簡易印刷機

*6:とくに「きっちり揃える」がやりやすい気がする。

*7:大学生協が契約してくれているおかげで月100円でOfficeがぜんぶ使えるということで、さすがに安いと思って入学してすぐに契約した。

*8:これは手書き指定されているとかいう話ではなくて、物理なので単純に手書きのほうが楽で速い。